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2026.3.8

【柳澤大輔×慶應SFC】クリエイティブの源泉 =真面目さ × 面白がる力  Alumni#2

面白法人カヤック創業者・柳澤大輔さんに、慶應SFCでの学生生活、就職から起業への歩み、組織づくりをインタビュー。真面目さと面白がる力から生まれるクリエイティブの源泉を聞きました。

【柳澤大輔×慶應SFC】クリエイティブの源泉 =真面目さ × 面白がる力  Alumni#2のカバー画像

本企画は、慶應SFCに関わる人々の歩みや思考を記録し、社会へ発信していくインタビューシリーズです。SFCで学ぶ私たち学生が、同じキャンパスを経験した先輩たちに「大学での学び方」と「軸のつくり方」など、直接聞いていきます。

第2回目のゲストは慶應SFCを卒業後、「クリエイティブ」を本気で社会実装する会社「面白法人カヤック」の創業者であり、CEOの柳澤大輔さんです。学生時代から今も一貫しているのは「目の前のことに一生懸命向き合う姿勢」。そんな柳澤さんはふざけているようで真っ直ぐ。その中に光るクリエイティブ性に迫ります。

柳澤さんの学生へのメッセージには、私たちの現在の過ごし方への迷いや不安を抱いている心にスッと新たな視点が差し込まれるはずです。


高校から慶應の道:「柳澤World」発揮は高校時代から

慶應高校の決め手は

家からの距離が近い

大学受験をしなくて良い

「ええええええ!!!」そんな単純な理由で⁈ 

超個人的な判断基準で迷わず決め打てる合理性、清々しい。


しかしこの選択については

当時もう少し選択することを考えたらよかったかもしれない

進学校に行って海外の大学を目指すのも面白かったと思う

と振り返ります。

高校時代の過ごし方は、少し意外なものでした。

授業中は教科書を机に置きつつ、競馬新聞を広げて読む

平日はほぼ麻雀

それでも成績優秀でまさに天才?と思ってしまいます。

実際は、テスト前にしっかり勉強していた結果で、要領が良かったのでした。

部活動の選択理由にも驚かされました。

体育会自動車部に入ってました

自動車に興味があったのか―――

全国で1つしかない部活動だったら

「ええええええ!!!」そんな単純な理由で⁈

「希少性>活動内容・部員・雰囲気」何にも勝る希少性、無敵すぎる。

                               「慶應自動車部 部車」


第一希望SFC:志望理由と「新しさ」への価値観

SFCを選んだのは極めてシンプルでした。

面白そうだったから

「ええええええ!!!」そんな単純な理由で⁈

面白さという名の直感に全賭けできる胆力、羨ましい。

当時のSFCは、設立間もなかったため、世間的な評価がまだ定まっておらず、「いい」「悪い」という判断すらできない、まさに“新しい学校”でした

柳澤さんにとって重要だったのは、本当に新しいかどうかよりも、「今それをやっていることが新しく感じられるかどうか」 という感覚でした。

古いものでも、今の文脈でやれば新しい

逆に、どれだけ立派でも「古い」と感じた瞬間、面白くなくなる

SFCは当時、その「新しく感じる場所」だったといいます。

しかし、その進路選択は周囲から理解されなかったそうです。

「慶應なら三田や日吉の学部だろう」

「なぜわざわざSFCなのか」

それでも最終的に決め手となったのは、世間の評価ではなく、自分自身の「面白い」という直感でした。

                               「1990年当時のSFC」


SFC LIFE:その時やることを、一生懸命やっていただけ

理系科目を中心に履修し、ニューラルコンピューティング(今でいうAI)を学び、研究していたといいます。

印象的だったのは、柳澤さんが 「モチベーション」という言葉を使わないことです。

やりたい/やりたくないは当然あるけれど、やるかどうかをモチベーションの有無で判断しない

「その時やることを、一生懸命やっていただけ」

ただそれだけだったといいます。

当時のキャンパスライフを聞いていく中でSFCが持っていた独特の雰囲気が浮かび上がってきました。

当時のSFCは「慶應らしさ」とは少し違う空気があった―――

AO入試が始まったばかりで、いわゆる 1教科だけが突出して得意な人、何かに強く没頭している人、そしてなんとなくSFCを選んだ人。多様な学生が集まり、良くも悪くもバラバラで、慶應っぽくなかった

一方で、魅力も感じていたといいます。

キャンパス周辺は今ほど栄えておらず、遊び場も少なかったからこそ、キャンパスに隔離されたような環境で、仲間と徹夜しながらプロジェクトを仕上げることができた

その閉じた環境が、集中して何かに打ち込める場になっていたと振り返ります。


就職する道を選択:起業への想いを呼び起こすきっかけに

学生時代から、「自分で会社をやったら面白そうだ」という感覚は、ぼんやりとあった柳澤さん。それでも、一度社会に出ようと就職を選びました。

就職して感じたのは違和感だった―――

会社の中で偉くなっていく人たちが、必ずしも自分が思う「イケている人」ではなかった。
その人たちを目指したいと思えず、

「この先に、楽しい未来が見えなかった」

 この感覚こそが、自分で会社をやるという選択を現実のものにしていきました。


面白法人カヤック起業:起業家精神

起業の核になったのは、SFCでの出会いと約束でした。

SFCで得た最大のものをきくとはっきりこう答えます。

「仲間との出会い」それ以上のものはない

高校2年で同じクラスで、SFCに入学した貝畑さんと、大学1年の4月に出会った久場さん。

ある日、車通学をしていた柳澤さんが「一緒に帰る人いる?」と声をかけると、ほとんど話したことのなかった久場さんが「はいはい」と乗り込みます。

1時間ほど車で話したことをきっかけに、

大学1年の6月に約束を交わします。

 「卒業後何年かしたら一緒にやろう」

明確な事業計画があったわけでもない。

ただ、
コイツだ!

その時のその直感がすべてだったといいます。


組織づくりの価値観:誰と何を面白がるか

カヤックが大切にしているのは、「何をするか」よりも「誰とするか」

自分が行きたい場所に行けば、自然と似た人が集まる——「類友」という感覚が根底にある

サービス作りに関してはこう語ります。

「こんなことやっていいんだ」「その手があったか」と思わせることを重視する

他の人がやらないこと、しがらみでやっていないことにこそ価値がある

一見できなさそうなことも、やってみたら意外とできる

世の中には、そんな「面白い余白」がたくさんある―――

その象徴が「まちづくりからうんこまで」の多岐にわたるサービスです。

コミュニティ通貨を通じて人とまちの関係性を育てる「まちのコイン」

地域の課題を、真面目な顔して議論するのではなく、いかに面白く解くか

カヤックは地域の豊かさを、お金=「経済資本」だけで測るのではなく、豊かな自然や文化といった「環境資本」、そして人と人のつながりである「社会資本」の3つから成る「ちいき資本主義」という考え方を掲げています。

換金性のないコミュニティ通貨アプリ「まちのコイン」を通じて地域の価値を多角的に可視化することで、まちを「課題の場」ではなく、誰もが自分らしく関われる「遊び場」へと変えました。

世界を席巻した「うんこミュージアム」

真面目にうんこを突き詰めた

汚い、隠すべきもの、という世の中のしがらみを、対極にある可愛くて、ポップなデザインに変換し、真面目に「うんこ」を突き詰めた結果、それは国境を越え、累計来場者数250万人を突破する巨大コンテンツへと化けました。

「真面目さ」と「面白がる力」。その両方が、柳澤さんの、そしてカヤックのクリエイティビティの源泉なのだと感じました。

                          共同企画:たのしいミュージアム       


学生へのメッセージ:将来を考えている学生こそ

「大学生活をどう使うべきか」という私たちの問いに対して、正解はない と前置きした上で、こう語ります。

将来を考え続けるタイプもいれば、目の前のことを一生懸命やるタイプもいる 

ただ一つ言えるのは、これは思考の癖であるということ―――

先のことを考えるタイプの人は考えるし、今を生きているタイプの人はそれほど考えない

社会人になってもその思考の癖は簡単に変わらない

だからこそ、若いうちに、自分の思考の癖を知ることが大切―――

脳も筋肉と同じで、若いほど鍛えやすい

迷っている学生ほど、自己対話の時間を持ち、自分の特徴や、伸ばすべきところなどを見極めるといい


後記:インタビューを終えて

このインタビューで一番印象に残ったのは、 柳澤さんが一度も「頑張ろうと思った」と言わなかったことでした。

モチベーション、目標設定、将来設計。そういう言葉がほとんど出てこない。

代わりにあったのは、「目の前のことを一生懸命やる」という、ものすごくシンプルな姿勢でした。

柳澤さんの直感を信じる力には文面でも感情を表にするほど何度も驚かされました。

私含め、選択するまでに多くの時間を費やすタイプにとっては、まさに信じがたいですが、でもそれがクリエイティブ精神を引き起こしたり、自分はやれるという自信の積み重ねの成果だったり、対極的だけど、実は考える力を養えていたりするのではないかと深読みしました。

SFCは、何かを成し遂げるための場所であると同時に、 一生モノの仲間・友人に出会う場所なのかもしれません。

この話が、いまSFCで迷っている誰かにとって、「今のままでもいいのかもしれない」と思える材料になり、少しでも心が軽くなればいいなと思います。

そして数年後、また別のSFC生が、「SFCに行った意味は、あの人に出会えたことだった」と語る日が来たら、それはきっと、最高にSFCらしい未来だと思います。


インタビュアー

吉田由良/林賢真/保科りさ子/小野瑛太